山羊の休み小屋―――コロナ禍での生活の気づき

去年の1回目の緊急事態宣言のころ自宅でのテレワークを始めると、どうしても外に出たくなり夕方は裏の山を一巡りするのが習慣になりました。事務所では昼も弁当を買ってきてもらってずっと座り続けていて平気なのに、自宅では家族から距離を取りたいという欲求なのか心持が変わるのです。そんなある日、山の途中に台風で倒れた幹と小枝を組み立てた何やら原始の小屋組風の一角を発見。子供たちの隠れ家かなと中を覗くと山羊が草を食み、周りで子供たちが世話をしているのです。朝の犬の散歩で出会う人たちとの世界とはまた違った地域の一面に接し、なにか得したような嬉しい気分になりました。

移動し、集まり、対話できる自由が社会を作るうえで欠かせないといわれるのは、そこに生まれるささやかな出会いや偶然の積み重ねが文化を生む力となるからです。テレワークで効率よく仕事を処理できても、思いがけないできごとは実際に移動し集まるところにしかないように思います。

適切な距離を取りながら社交し、マナーを守りながら会食する自由をむやみに規制するのでは不安と不満が募るばかりでしょう。対策は飲食店にではなく、飲食のマナーつまり人々のふるまいに対して行われるべきなのだと思います。そして飲食に限らず日々のふるまいをデザインする責任が私たち建築家にあることをあらためて心に刻むことになったコロナ禍の生活です。(荻津郁夫)

1コメント

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  • 藤江創

    2021.04.04 23:29

    木を編んだような屋根が素敵ですね。

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